共同声明・申し入れ

2016.08.02

首相・閣僚による靖国神社公式参拝中止要請のこと

真宗教団連合は、昭和44(1969)年の結成より一貫して、首相及び閣僚が靖国神社を参拝されることに対して、抗議や中止の要請を行ってまいりました。

申すまでもなく靖国神社は、国難に殉じた戦没者を英霊として顕彰し、祀る神社として創設され、先の大戦まで戦争遂行の精神的支柱として国家神道体制の中心的な役割を担ってきました。同時に戦争で亡くなった方を、故人の宗教や遺族の意志に関わらず特定の基準で選別し、強制的に合祀しています。

したがって、歴史的に見ても、合祀のあり方からしても、特異な一宗教施設として存在する靖国神社が今もなお「我が国における戦没者追悼の中心的施設である」という主張には無理があります。

さらに、日本国憲法では先の大戦の反省から、個人の信教の自由を保障するとともに、政教分離の原則を明確に打ち立て、国家に対し宗教的中立性を要求し、特定の宗教と国家とが直接結びつくことを禁止しております。

よって、私たちは、国家を代表する首相・閣僚が、憲法の精神に反してまで公式参拝することに強い危惧の念を有しており、深い悲しみと憤りを禁じえません。

釈尊は、仏法に教え導かれるところ「国(こく)豊(ぶ)民安(みんあん) 兵戈(ひょうが)無用(むよう)」(国は豊かになり人びとは平穏に暮し、武器をとって争うこともなくなる)と説かれ、浄土真宗の宗祖親鸞聖人は「世のなか安穏なれ 仏法ひろまれ」と願われました。

しかし、私たちは、その教えに背き、計り知れない惨禍を与えた戦争を「聖戦」と呼び、積極的に加担してきました。今、あらためて過去の過ちを深く懺悔するとともに、仏教者として、敵味方の区別なく、すべての戦争犠牲者の声を仏の願いとして聞き、それに報いるために有縁の方々とともに追悼法要などを通して、非戦平和に向けた取り組みを進めております。

今日まで日本は現憲法の「戦争放棄」のもと恒久的な平和の実現を求めてきました。そして、貴職は、戦後70年の節目に当たり発表された談話の中で、「不戦の誓い」を新たにし、「謙虚な気持ちで、過去を受け継ぎ、未来へと引き渡す責任がある」と述べられています。貴職並びに閣僚におかれましては、あらためて靖国神社公式参拝のもつ問題性を十分に認識され、公式参拝を行わないよう要請いたしますとともに、今後とも世界平和に向けた取り組みを進められますよう要望いたします。

平成28(2016)年8月2日

真宗教団連合    
浄土真宗本願寺派 総長 石上 智康
真宗大谷派 宗務総長 里雄 康意
真宗高田派 宗務総長 安藤 光淵
真宗佛光寺派 宗務総長 佐々木亮一
真宗興正派 宗務総長 龍村 豐雄
真宗木辺派 宗務長 藤本 秀曉
真宗出雲路派 宗務長 泰圓澄法嗣
真宗誠照寺派 宗務長 茨田 隆信
真宗三門徒派 宗務長 黒田 昌英
真宗山元派 宗務長 佛木 道宗

内閣総理大臣
安倍 晋三 殿

◎ホームページ用に体裁を変更しております。

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