森喜朗首相「神の国」発言の撤回を求める要請文

去る、五月十五日の神道政治連盟国会議員懇談会の席上で、森首相は「日本国はま さに天皇を中心にしている神の国であるということを国民の皆様にしっかりと承知し ていただくこと。その思いで我々が活動して三〇年になった」等と発言されました。 今日の私たちの国がどういう国であるのか、またこれから世界においてどういう国を めざしていくかについての認識がまったく欠落した発言であります。その後、五月十 七日参議院本会議の答弁、また、二十六日の記者会見におかれ、「誤解を生じさせ、 ことば足らずであった」と陳謝はされました。

しかしながら、首相のこれまでの教育勅語に対する発言や靖国神社への公式参拝 などの行動に鑑みれば、「意が充分に伝わらない」、「誤解を生じさせた」ではなく、 貴職は否定されましたが、一国の首相として皇国史観に基づく発言としか受けとれな いものであります。

私たちは、過去、真宗門徒を名告りながら宗祖親鸞聖人の教えに背き、仏法の名 において積極的に戦争を肯定し、国家に協力して多くの方々を戦地に送り出し、アジ ア諸国等の人々に言語に絶する惨禍をもたらしました。

私たち真宗教団連合に加盟する各宗派は、この罪を深く慚愧し、すべての戦争犠 牲者に哀悼の意を表するとともに、宗祖親鸞聖人の教えに立ち戻り、再び過ちを繰り 返すことのないよう仏の前に自らを戒め、微力ながら多くの人々とともに平和への努 力を訴えてまいりました。

今回の首相の発言は、全人類が目指す平和への願いと努力を踏みにじるものと言 わざるをえません。今また、戦前の国家神道体制を志向するこのたびの首相の発言に 対して、私どもは強く遺憾の意を表し、曖昧な陳謝ではなく、明確な撤回を求めるも のであります。以上

平成十二年六月一日

真宗教団連合    
浄土真宗本願寺派 総長 蓮  清典
真宗大谷派 宗務総長 木越  樹
真宗高田派 宗務総長 安藤 光淵
真宗佛光寺派 宗務総長 川端 照道
真宗興正派 宗務総長 秦  正静
真宗木辺派 宗務長 高田 信昭
真宗出雲路派 宗務長 菅原  弘
真宗誠照寺派 宗務長 波多野 淳護
真宗三門徒派 宗務長 寺川 秀丸
真宗山元派 宗務長 佛木 道宗

内閣総理大臣
森  喜朗 殿

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