首相、閣僚の靖国神社公式参拝反対についての要請

今年もまた、鈴木首相をはじめ閣僚は、八月十五日に、靖国神社に参拝を行うこととなったと伝えられております。

この参拝については、去る七月七日、首相は、「内閣総理大臣として参拝するから、公人私人と聞かれても、一切答えません」と、参拝資格についての新しい方針を語っておられます。しかし、この発言は、「事実上の公式参拝」を強行することを、首相自からが確認されたものとしか受けとれません。

いうまでもなく、「靖国神社」は、その名の示すとおり、「神社」であり、完全な宗教施設であります。そこに、「内閣総理大臣」が、参拝することは、国が特定の宗教即ち神道を特別に扱うこととなり、憲法違反そのものであり、明らかに「政教分離」の原則を無視されたものといわなければなりません。

さらに、首相は同じ日に、「英霊を尊ぶ気持を、私は行動で示しているつもりです」ともいわれたようです。その「英霊」を尊ぶことが、先きに国家の犯した戦争の過ちを正当化することになってはならないと考えます。

戦争の犠牲者を悼み、これを追悼するという心においては、私たちは、人後に落ちるものではありません。

しかしながら、その追悼の心情は、神道にもとづいて造られた一宗教団体の施設である靖国神社への参拝と直ちにつながるものではありません。これは、国およびその機関が特定の宗教(国家神道)と結びついて、人の心まで左右した過去の過ちを、私たちは決して忘れてはならないからであります。

私たち、真宗教徒は、昨年にも、公式参拝反対の要請をいたしましたが、あくまでも黙視することができず、ここに、首相はじめ閣僚、その他政府機関の職員が、その資格において、靖国神社に公式参拝されることに、強く反対の意を表明し、靖国神社への公式参拝は、今後一切中止されるよう要請するものであります。

昭和五十七年八月六日

真宗教団連合理事長
浄土真宗本願寺派総長  豊原 大潤

内閣総理大臣
鈴木 善幸 殿

真宗教団連合加盟宗派
 浄土真宗本願寺派
 真宗大谷派
 真宗高田派
 真宗佛光寺派
 真宗興正派
 真宗木辺派
 真宗出雲路派
 真宗誠照寺派
 真宗三門徒派
 真宗山元派

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